海の底から

備忘録

子どもと自然

 将来的に子どもを希望しない独身男女が増えているそうだ。
(2015年8月24日中日新聞朝刊 厚労省「二十一世紀成年者縦断調査」による)
 だいぶ前にも結婚に関するアンケートで、独身でいる理由に「何となく」というのがあった。
 こういう調査結果がでてくるたびに、若者の非正規雇用が問題だとかいわれて、何とかして出生率を上げようといった流れになる。
 けど、どうなんだろう。
 こういうニュースを聞くと、私はある事実を思い出す。
 「類人猿の分娩は一般に2時間以内で終わるが、人間では初産時には14時間、経産婦でも平均8時間を要する」こと。
(『子どもと自然』(河合雅雄 著 岩波新書より)
 人間は天敵のいない種族なのだ。しかもいつでも交尾可能。
 だから人口が増え過ぎないよう、難産という大きな荷物を背負ってるんだって。
 女性にしてみればひどい話だけど、事実だ。
 世界人口が100億突破するのも時間の問題ってご時世に、何となく結婚しない、子どもを望まないと思うのは、むしろ自然なのではないか。
 人口を抑制しないと食糧問題や環境破壊で地球が大変になるぞって、生き物の本能がささやくのではないか。
 市場経済が縮小するから、労働力が不足するから産めよ増やせよといったところで、自然の摂理には逆らえまい。
 しばらくは高齢者の方が多い異常事態が続くけど、それでも人の数が減った方がいいと思う。

 『子どもと自然』の著者・河合雅雄さんは、私の好きな臨床心理学者・河合隼雄さんのお兄さん。
 図書館でうっかり隼雄さんの本だと思い込んで、せっかく借りたんだからと読んでみたら面白くって、だいぶ後に血縁者だと気付いたというw
 雅雄さんは霊長類学者で、この本では、サルの研究を通じて、人間の子どもを取りまく問題についての提言が書かれています。
 人間の行動原理も、サルまで遡るとよく理解できる。
 たとえば人が緑を求め、緑の中で安心するのは、遠い祖先が森の中で樹上生活をしていたから といわれれば、なるほど納得。
 他にも、これからの教育や家族の在り方を、オランウータンやチンパンジーを例えに分かりやすく解説。
 父性と母性というユングの思想も持ち込んで、父親に家庭での子育てを強く提案しておられるのは、弟さんの影響でしょうかね。とても仲の良い兄弟だったそうなので。
 かつては、お隣の犬山市にある日本モンキーセンターの所長もしていらしたとか。
 ちらっとでもお姿を拝見したかったなぁ。
 
  1. 2015/08/29(土) 14:02:15|
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日本の面影

 『ブラタモリ』(NHK)が好きでよく見てる。
 この間は、ちょうど今読んでる本にも登場する出雲の街が舞台だった。偶然だなぁ。
 「杵築(きづき)」という古い地名が、番組でも紹介されてた。

 『新編 日本の面影』(ラフカディオ・ハーン 著 池田雅之=訳 角川文庫)

 この本は、ハーンこと小泉八雲さんが綴った日本旅行記である。
 この人、古事記を読んで以来、ずっと日本の出雲へ行きたかったんだって。
 それでとうとう、西洋人として初めて出雲大社への昇殿を許されたんだって。

 その体験を余さず書き込んであるのが「杵築――日本最古の神社」の章。
 日本についての造詣が深い外国人による観察眼は、日本しか知らない私に、未知なる発見を与えてくれる。
 神有月になると、海から竜蛇様(白蛇様ともいう)がやってきて、八百万の神々の到来を告げるという。
 へぇ~。
 私なんて、白蛇は金運アップのご利益があって、もし目にしたら宝くじを買おう くらいの知識しかなかった。
 ものを知らなすぎて、天岩戸があったら入りたい////

 八雲さんは日本人の精神が、神道に支えられていることをつぶさに見抜く。
 聖書のような書物がないから、神道は邪教だと誤解した多くの宣教師たちとは違い、神道が日本人の心に生きていることを、きちんと理解している。
 そういう目に見えないものを、ギリシャ生まれのイギリス人が発見するとはね。

「神道には、哲学もなければ、道徳律も、抽象理論もない。ところが、あまりにも実体がないことで、ほかの東洋の信仰ではありえなかったことであるが、西洋の宗教の侵入に抵抗することができたのである。」
「風変わりな迷信や、素朴な神話や、奇怪な呪術のずっと根底に、民族の魂ともいえる強力な精神がこんこんと脈打っているのである。」
「日本人の美意識も、芸術の才も、豪勇の熱さも、忠誠の厚さも、信仰の感情も、すべてがその魂の中に代々受け継がれ、はてには無意識の本能の域にまで至っているのである。」

(『新編 日本の面影』より引用)
 
  1. 2015/08/24(月) 23:48:16|
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進.撃の巨.人 16

 人って逆境に立たされると、ビビって悩んで落ち込んで、時には周りの人を恨んでうらやんで、しまいにいじけて無気力に…なんてパターンにはまりやすいです。 私がそうだから間違いない。
 しかし、この物語の少年少女たちは、壁の中で偽りの平和を甘受する運命を蹴っ飛ばし、命がけで運命と闘う道を選びます。
 何度踏みにじられても立ち上がる、その姿が痛快で、思わずガッツポーズしたくなります。
 この作品が、登場人物と同世代の読者から人気があるのもうなずけますね。 大きな励みになることでしょう。

 16巻では、この国を最初に作った王さまの末裔である少女が、自身と国の運命を大きく左右する選択を迫られるのですが、文字通り、運命を投げ飛ばしました。
 ハッハッハ、いやーそうきたか。 実に傑作。 してやったりです。 ガッツポーズでました。
 巨人やこの世界の成り立ちの謎も、徐々に明かされ、いよいよストーリーが盛り上がってまいりました。 次巻が待ち遠しいです。

 にしてもミカサやサシャたち女の子が、強靭な精神力で逆境を跳ね返すのに比べると、男の子は跳ね返すのに時間がかかりますね。
 特にエレン、お前主人公だろ、巨人じゃなく己の弱さに立ち向かえ。 じれったいなぁ。 次巻こそ活躍するかなぁ(遠い目)
 
  1. 2015/04/12(日) 19:59:05|
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古い本

 よくネットで古本を買います。
 安いし、人から人へと渡ってきた本には、独特のにおいが染みついてる気がして、好きなんです。
 でもこの間届いた本には困ってしまいました。
 前の持ち主による書き込みがあって、しかも消せない類のものだったので。
 その旨古書店に伝え、返品もしくは交換をお願いしました。
 すると、返金します、本は返さなくて結構です、そちらで処分してください、とのこと。
 丁寧な対応に感激しました。
 というわけで、件の本は今も私の手元にあります。 本を捨てるなんてとんでもない。

'15-03-15 b
 蛍光ペンによる塗りつぶし。
 こういうことをすると、他の部分を読み飛ばしてしまって、全体像が分からなくなるんですよね。
 作者が伝えようとした大事なことは、全部を読まなきゃ得られませんから。

'15-03-15 a
 シャーペンと蛍光ペンによる書き込み。 全ページの半分以上がこんな感じ。
 ある意味、この本は幸せです。
 これだけ徹底的に読んでもらえたんですから。
 メモの内容から察するに、勉強好きの女性が書いたんでしょう。 フランス語の文を自分で訳したり、(>_<) ←こんな顔文字が書いてあったりしましたから。
 私もこのくらい理解できるよう読み込まなきゃね。

(上の写真は『目に見えないもの』 湯川秀樹 著
 下の写真は『「いき」の構造』  九鬼周造 著  どちらも講談社学術文庫)
 
  1. 2015/03/16(月) 20:20:20|
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ジョコンダ夫人の肖像

 『ジョコンダ夫人の肖像』 E・L・カニグズバーグ 作 松永ふみ子 訳 岩波書店

 私の好きな臨床心理学者の河合隼雄さんがお勧めしていた本、やっと読めました。
 「つぎつぎと傑作を生み出すカニグズバーグの作品のなかでも、最高の名作と言ってよいほどのもの」(『子どもの宇宙』 河合隼雄 著 岩波新書 より)と絶賛されていたので、気後れして、なかなか手が出なかったの。
 面白いと思えなかったらどうしようって。
 ま、そんなことは全然なかったんですけどね。


【あらすじ】
 ジャン・ジャコモ・ド・カプロティ、通称サライは、ミラノで暮らす貧しい少年。
 サライは金持ちの財布をスリ取ろうとして、レオナルド・ダ・ヴィンチに捕まるが、彼はサライを許し、徒弟にする。
 ある日、サライはレオナルドが仕えているミラノ公の妻・ベアトリチェと出会い、意気投合する。
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テーマ:小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2015/02/07(土) 17:55:55|
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