海の底から

備忘録

小説『君に届け 7 ~あたらしい日々~』

 '10-07-01 c
 『君に届け 7 ~あたらしい日々~』
 著者 下川香苗  原作 椎名軽穂  集英社 コバルト文庫



 新刊ゲット。
 内容は、原作11巻のepisode43と、45。
 爽子とくるみの最終章と、夏休み直前のお話です。
 episode44を飛ばしたのは、風早視点で語られる話だから、かな?

 くるみちゃん好きな下川香苗さんの筆が冴える、読み応えありの1冊でした。
 このくらい丁寧に書かれていると、原作の補完になって、いいですね。
 原作のイメージを壊さない程度に、少し台詞を加筆してあるのも、より分かりやすかったです。

 (7/6、加筆、追記)
 
 
 特にあやねが、くるみに放った一言、
「風早に、あんたは無理よ」
の真意に納得しました。

 <風早の方が、くるみとつきあうのは無理>
 <風早では、くるみを受け止められない>

 そう言って、くるみの報われなかった痛みを、和らげてくれたんだ。
 …そっか。
 風早に、くるみの想いは、理解できないのか。
 切ない事実。
 好きな人に、自分を分かってもらえないなんて。

 てっきり私は、
 <くるみは、風早につりあわない>
という意味だと、勘違いしていました。 あぁ恥ずかしい。

 私は、くるみのしたことを許せない派ですが、これで怒りは消えました。
 彼女は もう充分、罰を受けたから。
 ライバルに自分の悪事が露呈し、ライバルの助言で告白→ふられて、完膚なきまでに叩きのめされたから。
 ここまで潔い敗者も、そうはいません。
 しかもたった一人で闘いぬいた。 見事なライバルでした。


 あやねの口を借りて、爽子について語るシーンも良かったです。
 -この子は、すごくやさしくていい子だから、それでクラスで浮いてしまったんだな、って。
 (中略)
 もしも爽子が思ってもいないことでも平気で言えたりするような子だったら、きっとクラスでさけられたりしなかったはずだ。-
 (P.174)
 私もそう思う!

 女の子たちにはお喋りが、お喋りには噂話(=悪口)がつきもの。
 皆で盛り上がって、勝手な批評を繰り広げれば、ストレス発散になります。
 悪口には、誰か一人を敵視することで、仲間の結束を強める効果もあります。

 でもね、他人の悪口を言い合って、何が楽しいのでしょう?
 なぜ、自分の意見が正しいと、言い切れるんでしょう?
 どうして、決め付けた物の言い方が、出来るのでしょうか?
 その人のことを、全部知ってるわけじゃないのに。

 今まで爽子が、女子に特有の、薄汚れた連帯に巻き込まれずにすんだのは、不幸中の幸いだったのかもしれません。
 ひとりぼっちで、寂しかっただろうけどさ。


 そういえば、本編にありましたね。
 中学時代、千鶴がくるみに利用されて、クラスの女子に責められたり、くるみが仲良しグループの子に利用された上、裏切られていたり。

 女が徒党を組むと、実に恐ろしいです。
 抜群のチームワークで、一人を潰しにかかるから。

 逆に、仲間外れになるのを恐れて、周りに迎合する連中の、なんと多いことか。
 カゲキ派・ユカの取り巻きの子たちが、風早を好きだと明かせなかったのは、ユカに敵対視されるのを怖れて…という小説の指摘は、その通りだと思います。

 小説のカゲキ派がおっかなかったので、女同士が男をめぐって諍う時の嫉妬心って、怖いなぁと再認識。
 プライドが高い女ほど、
 (私があんな女に負けるなんて、ありえない!)
 と、怒りで牙を向くから、まともにやり合ったら、無傷じゃすみません。

 女の嫉妬で思い出すのは、『源氏物語』に登場する、光源氏の母、桐壷更衣(きりつぼのこうい)。
 桐壷は、帝に溺愛されたせいで、他の女たちに恨まれて、死んでしまいました。

 ねたまれ、いじめられ、ノイローゼになって、衰弱死した桐壷。
 彼女は、帝の寵愛を一身に受ける、「幸せだけど不幸せな女」の象徴でした。

 でも爽子は、そうはなりませんでした。
 それどころか、ライバルの気持ちを思いやることが出来る、芯の強い子でした。
 嫉妬という、人の心の中で最も醜い感情さえ、浄化してしまうんですから。

 しょせん漫画、都合のいい作り話だから、と言われれば、それまでですが、何事もうまくいくと、他人からは嫌われるもの。
 それを避けずに描く、原作者の椎名さんは、繊細で心の広い方だと思いました。

 ちなみに風早は、まっすぐな性格からして、この手のいざこざには疎いと思われます。
 そのせいか、この巻では出番が少ないです。
 まあ、説明されなくても、爽子を分かってあげてほしい…と願うのは、欲張りかな。

 ともあれ、風早は浮かれてばっかりいないで、もっと奮起しなきゃね。
 頑張る爽子に負けるな!


 ------追記(7/6)------

 龍の「好きだよ」告白は、千鶴に届かなかったんですか!?Σ(゜ロ゜;)
 千鶴は、幼なじみとしての「好き」だと認識しているんですか?

-こんな至近距離で、妙に真剣な目つきをして言うから、一瞬、別の意味に聞こえた。もっと別の意味の“好き”に聞こえて、うろたえてしまった。-(P.136)
 ちょ、千鶴、それ、うろたえていいから!

 私は千鶴が、龍の恋愛感情に、感づいてるとばかり思ってたのに。
「知ってるっての!」
と、千鶴は慌てて答えてたけど、通じてなかったのか。
 少しは胸に響いたようですが。

 千鶴が龍の長所を「愛情深いとこ」と言ったのは、「親愛の情」であって、「恋愛感情」じゃないんですね。
 なーんだ。
 だから龍は、「気の長いとこ」が長所だなんて、千鶴に言ったのか。

 龍と千鶴は、カップルって感じとは、どうも程遠いんです。
 いい雰囲気ではあるけれど、長年連れ添った老夫婦のよう。
 幼なじみが陥りやすい、馴れ合いの関係を、早めに打破しないと、一生このままかもよ。
 風早に触発されて、龍が行動を起こすことに期待!
 

テーマ:君に届け - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2010/07/03(土) 10:31:24|
  2. 君.に.届.け
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