海の底から

備忘録

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

キュリー夫人

 『キュリー夫人』
(エリナー・ドーリィ 作 光吉夏弥 訳 岩波少年文庫)

 偉人伝といえば、ヘレン・ケラーしか読んだことがありませんでした。
 偉人といえば、才能があって、努力して、苦難を乗り越え、多くの人々に役立つ業績を残した、立派な人----
 …住む世界が違うな、とっつきにくいな、と感じていました。

 だけど、放射能の研究をした人ってどんなかな、と思い立ち、読んでみました。
 
 
 なんという、エネルギーに充ちた、濃密な人生を送った人でしょう。

 こういう人に共通しているのは、見えないものを見る力…なんだと思います。
 そして、それを信じぬく、意志の力。
 マリーが書いたものからも、強く、はっきりと、伝わってきます。

「人生は、私たちの誰にとっても生やさしいものではない。 だが、そんなことがなんだろう。 私たちは耐え忍び、自分に自信を持たなければならない。 私たちの才能は何かの目的のために与えられたものであることを信じ、たとえどんな犠牲を払ってでも、その目的を達成しなくてはならない」

 マリーは、恐るべき忍耐力で、遂にラジウムを発見します。
 未知の存在であるラジウムがあると信じ、自ら鉱石を煮つめ、作り出すことに成功するのです。

 その夜、子どもを寝かしつけた後、実験室のある大学に戻って、ラジウムを見つめるエピソードは、印象的でした。

 闇の中に浮かぶ、青白い光の粒々。
 小さなガラス容器の中で輝く、ラジウムの神秘的な光。

 共同研究者の夫・ピエールと共に、新しい物質を追い求めた、楽しく辛い4年間が、二人の脳裏に浮かんでは消えたことでしょう。
 防護服もつけず、しょっちゅうラジウムで火傷をしていたというから、まさに命がけの研究でした。

 その後ノーベル賞を受賞して、有名になりすぎたために、大衆の嫉妬や、スキャンダラスな新聞記事に悩まされたとは、悲しいことです。

 第一次世界対戦中、傷ついた兵を助けるために尽力したことや、ラジウム製造法の特許を取らなかったことは、マリーの誠実さを如実に語っています。

 マリーは、あらゆる知識をすべての人に、無償で与える科学的精神を愛しました。
 名誉やお金より、研究と質素な暮らしが好きな人でした。

 彼女が無名で、若くて、真理への探究に突き進む学生時代が、もっとも面白く読めました。
 知的好奇心の塊で、飢えを満たすように学業に没頭する彼女の情熱が、素晴らしく感動的でした。

 著者のドーリィは、マリーに尊敬の眼差しを注いで、書いています。
 著者が彼女を好きなことが、言葉の端々から感じられました。

 勉強にのめり込みすぎて、食事や睡眠を疎かにするマリーを、「かわいいおばかさん」と称しているんです。
 そんなマリーを、いつの間にか私も好きになっていました。

 科学者であり、人生の達人でもあったマリー。
 家族を愛し、多くの友人と語り、存分に遊び回った子ども時代も、とても面白かったです。

 やがて、尊敬に値する男性と恋をして、結ばれ、子どもを生み、家事と育児、それに自身の研究と、たくさんの仕事をこなしました。
 その不屈のバイタリティには、敬服いたしました。

 もしもマリーが、今の日本に生まれ変わったら、何を思い、考えたでしょう?
 原子力発電が怖いのは、放射能が見えないし、どんなものか分からないからです。

 無知ほど恐怖を煽るものはありません。
 マリーのように、恐れず、怯まず、知ろうとすることから、状況を打開する手がかりが得られるような気がします。


【マリー・キュリーが、ありったけの情熱を傾けた学生時代に書いた詩】

学びの道は遠く、
 きびしく、つらかった。
まわりをとりまく若人たちは、
 ただ快楽を追い求めていた。
その少女のみ、ひとり
 心ゆたかに、大らかだった。
時の流れは速く、知識と
 芸術の国から、彼女をつれ去った。
灰色の人生の道で、
 日々のパンを得るために━━。
しかし、少女の魂は、
 貧しかった屋根裏の一隅を思いなつかしむ。
黙々として学びにはげんだ
 あの運命の思い出にみちた部屋を。

 

テーマ:読書感想 - ジャンル:本・雑誌

  1. 2011/03/26(土) 10:30:04|
  2. 本&漫画
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<アニメ2nd ep.9 告白 | ホーム | 踏ん張りどころ>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://umi88.blog54.fc2.com/tb.php/1226-b31d6129
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

藍田海

Author:藍田海
・ Twitter

最近の記事

カテゴリー

ブログ内検索

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。