海の底から

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春の嵐 感想

『春の嵐 -原名ゲルトルート-』
 ヘルマン・ヘッセ 著 高橋健二 訳 世界文学全集Ⅱ-16より


【あらすじ】

 主人公のクーンは、音楽家を夢見て、日々勉強する青年です。
 でも、事故で片足の自由を失ってからは、友人も失い、己の才能に対する自信も失い、将来をあきらめていました。
 
 
 そこへ現れたのが、ハインリヒ・ムオト。
 彼は、将来有望なオペラ歌手で、まだ無名のクーンが書いた歌を気に入り、友人になります。

 クーンは、仕事が元で知り合った清らかな淑女・ゲルトルートに、ひと目惚れします。
 ですが、劣等感に苛まれるクーンは、、好きな人に好きといえないのでした。

 その後、クーンを通じて知りあうムオトと、ゲルトルート。
 二人はすぐに愛し合い、結婚します。

 後悔し、死ぬほど追いつめられるクーンですが、どうすることも出来ませんでした。
 が、二人の幸せな結婚生活は、長く続かず……。


【感想】

 小説というのは、作家の個人的な体験をもとに書かれた絵空事です。
 それがなぜ、違う時代、違う国に生まれた私に、かくも訴えてくるのか、不思議。

 その人だけの考え方、感じ方は確かにあるけど、その人に共鳴する心が、確かにある。
 井戸を深く掘り進んだら、「孤独」という大きな水脈に届いてしまいました。

 特に、クーンの少年時代が、怖いくらいリアリティに満ちていて、本当に小説かと疑ってしまいました。
 きっと、苦労して作家になったヘッセ自身の、挫折体験などが元になっているから、真実味があるのでしょう。
 怪我をして、立ち直るまでのクーンの落ち込みようったら、みじめ過ぎて、身につまされます。

 この本には、音楽によって結ばれた3人の、恋と友情が描かれています。
 素晴らしい出会いと、悲劇的な別れ。
 自信家で激情家のムオトが、もっとも哀しい結末に至ったのは、予感めいたものがあっただけ、読むのが辛かったです。
 ゲルトルートもムオトも、愛する人を求めて、孤独に陥ってゆく…どうしてこうなってしまうのでしょう。

 でも作者が伝えたかったであろう結末には、納得しています。
 つまり、幸不幸にこだわらず、全てを受け入れようってことです。

 クーンはもっとも不幸な時、内面からあふれ出す音楽に、光明を見い出します。
 音楽を言葉で表す、この筆致のすごさは、正確に書き表せません。

 しょせん、ひとはひとりぼっち。
 それに感応する者同士の、心のつながりを探すのが、人と出会う喜びなのでしょうね。
 この本との出会いも、私にとって喜ばしいことでした。
 

テーマ:小説 - ジャンル:本・雑誌

  1. 2011/07/31(日) 23:06:50|
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