海の底から

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晴天の迷いクジラ

 新聞の書評で“お薦めの1冊”と紹介されていたけれど、面白く感じられなかった『晴天の迷いクジラ』(窪美澄 著 新潮社 )について書きます。
 
 
 主な登場人物は3人。

・ 由人、24歳。 倒産寸前のデザイン会社で仕事に忙殺され、ウツになり、彼女にふられた青年。母の愛に恵まれず、引きこもりの兄と、15で出産した妹あり。
・ 野乃花、48歳。 倒産寸前のデザイン会社の社長。18歳で出来ちゃった婚をし、育児ノイローゼとなって家族を捨てた過去を持つ。
・ 正子、16歳。 母親の溺愛から逃げられず、たったひとりの友を亡くし、引きこもってリスカを繰り返す女子高生。

 この3人が、小さな湾に迷い込んだクジラを見に行く旅に出ます。
 旅を通じて、出会い、語り、人生の転換を図る…というお話。

 しかし、よくもまあ、これだけ弱りきった情けない人物を書けるものだと、感心します。
 ウツや自殺未遂などは、ストレス社会の現代ではありふれたテーマです。死んじゃおっかな~って考えたこと、誰だって少しはあるでしょう。
 ほんとに死にたがってる人がこれを読んでも、救われないでしょう。自分よりマシ…と蔑むことで、立ち直るきっかけには なるかもですが。
 だから、この本が誰のために、何のために書かれたのか分からなくて、首をかしげています。

 書評では、「読む者を包み込むような作家の優しさがにじんでくる1冊」とあったのですが、私の中にそういう気持ちは湧いてこなかったなあ、残念ながら。
 やはり、疑問が払しょくされないからでしょうね。
 …どうして男が何もしないのか? なぜ父親の影が薄いのか?

 由人の父親も、野乃花の父と夫も、正子の父親も、そこにいるだけ。
 当事者なのに、家族の問題にほとんど口を挟みません。
 積極的に妻や子どもと関わり、共に考え、苦しむ姿が無いのです。 家族みんなの問題なのに。

 確かにこの国では、父親が社会で担う役割が、はっきりしていません。
 「イクメン」などがもてはやされてはいても、育児は母親に一任…というのが実情でしょう。
 無自覚で、無責任で、無能な父と夫が、登場人物を苦しめた遠因に思えて仕方ないのです。
 その不気味さが苦い後味となって、優しさを感じられませんでした。

 私が結婚というものに懐疑的な独身女性だから、男性に対してちょっと厳しいのかもしれません。
 前作『ふがいない僕は空を見た』も合わせて読んで、ほんっとにふがいない男どもばかり出てきたので、食傷気味なのかもしれません。

 私には、どろどろした性欲や、冷酷な目線で書く作者が、どうも合わないみたいです。
 いい言葉を知るには悪い言葉も知らないと…と思い、いつもと毛色の違う作品にチャレンジしてみましたが、無理して読む必要はなかったな、もう充分。

(『ふがいない僕は~』は「女による女のためのR-18文学賞」大賞受賞作なので、免疫のない方は読むのを控えた方がいいです)


------ 追 記 ------

 私の個人的見解です。
 否定的な感想が多いのは、それだけ私にとって触れられたくない部分が揺さぶられたということです。
 そういう意味では、読んで得たものもあったと思います。
 

テーマ:図書館で借りた本 - ジャンル:本・雑誌

  1. 2012/07/01(日) 19:27:28|
  2. 本&漫画
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