海の底から

備忘録

読むということ

「読み始めたらつづきが気になって、次々ページをめくって止まらなくなるよね」

 本について話してたら、同僚にこのように言われ、私は絶句してしまいました。
 なぜって、そんな経験、久しくしてなかったから。
 私にとっての読書は、作者との対話であり、対決であり、苦行です。
 単に娯楽として読む本は、物足りないです。
 それに、変化に富んだストーリーは、その時はワクワクさせてくれますが、時が経てば忘れてしまいます。
 頭に残るのは印象的な一言であり、イメージであり、作者の肉声なのです。

 もちろん漫画や小説は好きで、今もドキドキしながら読みます。
 でも、面白いから読む、というより、知らない事が怖いから、本を読まなければいけない―という強迫観念の方が強いです。
 無理に詰め込んでも、頭のメモリーが足りなくて、活字の海でアップアップしてますが。

「子どものときに、自分にとってやっぱりこれだという、とても大事な一冊にめぐり逢うことの方が大切だと思いますね」
(『本へのとびら ――岩波少年文庫を語る』 宮崎駿 著 岩波書店 より)

 私にはそんな本との出会い、なかったなあ。ちょっと悔しい。
 その代わり、大人になってから出会った『子どもの宇宙』(河合隼雄 著 岩波新書)が、めぐり逢えてよかった本の筆頭です。
 臨床心理学者の河合さんが、心理療法の事例や、児童文学を通じて、豊かな可能性を秘めた子どもの心の中を探求する本です。
 児童文学を通じて子どもの内面を語っているので、まずその児童文学を全部読まないと。
 その上で、河合さんの他の著作も読まないと。
 ここに私の知りたかったことが書いてあるはずだから。

 河合さんの本は、何べん読み返しても、全然理解出来ない、難攻不落の城ですが、なぜかワクワクするんです。
 同じ本を、時間をかけて、繰り返し読むのが好きです。
 少しずつ言葉が心にしみこんで、本と仲良くなっていく、その過程が好きなんです、きっと。

 読書とは、空想小説のように愉楽を享受するものなのか、あるいは知識を得るための苦行なのか。…否、苦しみであり、楽しみでもある。
 
  1. 2012/12/03(月) 21:10:03|
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