海の底から

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風立ちぬ 感想2

 『時代の風音』(堀田善衛 司馬遼太郎 宮崎駿 共著 朝日文芸文庫)というお3方の鼎談(ていだん)の中で、こんな話が載ってました。
 
 
 
宮崎「私なんかは学生時代に書物で社会主義というものに触れて、これしかないんじゃないかなと思った時期がありました。
  ベルリンの壁が瓦解する以前にもう社会主義を見放してましたけど、自分の認識の浅さも含めて、なぜ社会主義はこうなってしまったのかなあと思い、理想だと頭で考えていた社会主義とは全然違う社会主義という名前のものができてたんだなということを、いまあらためて思うのですけど」


 宮崎さんの疑問に対して、堀田さんと司馬さんが、当時を振り返ってこう語られます。

司馬「昭和初期、多くの知識青年が左翼になったということを、後世の人たちはちょっと誤解すると私は思いますし、その理由がよくわからないでしょう。現場の感覚というものはわかりませんでしょう、同世代でないと。」

 興味深いことに、ここで堀辰雄さんの名前も出ます。 当時は文学界も左翼になった方が多かったそうです。しかし…

司馬「堀さんは免れてるんですね。」
堀田「そうなんです。だけど堀さんも、私は家が杉並で近くてよく散歩のときなんかに会って話をしましたけど、戦時中はやはり「堀田君、ヨーロッパ全部が社会主義になる日まで、俺、生きていたい」と言ってました。亡くなったのは戦後ですけど。」


 堀田さんは1918(大正7)年生まれ、司馬さんは1923(大正12)年、宮崎さんは1941(昭和16)年生まれです。
 関東大震災のあった年に生まれた司馬さんは、大阪府出身なので、震災は免れました。
 不況と戦争が続く中で、当時の若者たちも、理想を追い求めていたんです。 その結果が敗戦では、いたたまれません。

 『風立ちぬ』の主人公・二郎さんは、堀越二郎と堀辰雄のごちゃまぜだと宮崎さんは仰っていましたが、他の人もたくさん混ざってるように思います。
 もちろん、宮崎さん自身の投影でもあると感じました。
 誰よりも仕事熱心で、空想好きで、タバコ好きなとこも(笑)
 それに、二郎さんの親友で、仕事仲間で、ライバルでもある本庄は、高畑勲さんみたい。 顔は似てませんが。

 宮崎さんの過去作では、多くの少年たちが、夢を追いかけました。
 しかし子ども向けなので、夢に向かって旅立つところで終わってました。

 もしかしたら二郎さんは、イタリアで挫折した聖治君(『耳をすませば』)かもしれないし、サンとエボシの橋渡しに失敗したアシタカ(『もののけ姫』)かもしれません。
 今だからこそ、あえてそこまで描かなければならないという宮崎さんの強い決意が、映画に込められています。
 その思いに慄然として、私なんかは立ちすくんでしまうのです。

 昨日は呆然と1日が過ぎてしまいましたが、私より若い子たちが、よりよい世界で生きられるよう、自分を奮い立たせないとな。
 私の隣で映画を観ていた中学生くらいの女の子が、自分のやりたいことをやれるように。
 まずは、参院選だ。 これから投票に行ってきます。


 昨日の中日春秋でも、この本について取り上げていました。
 単行本は1992年出版。
 ベルリンの壁が崩壊し、東欧の社会主義国が次々と倒れた頃です。
 あの頃は、あとあと教科書に載るようなすごい事件が どんどん起こってることを、私もひしひしと感じました。
 歴史って、こんな簡単にひっくり返るんだなあって。

 世界はますます混沌としています。 未来なんて誰にもわかりません。 だからみんな不安なんです。
 それでも、この本を読むと、世の中のことを真剣に考える大人がちゃんといたんだってことを知り、少しだけ気分が軽くなりました。
 『風立ちぬ』も、そんな映画です。
 

テーマ:映画 - ジャンル:映画

  1. 2013/07/21(日) 07:22:20|
  2. アニメ>ジ.ブ.リ
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