海の底から

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思い出のマーニー 感想

『思い出のマーニー 上・下』 ジョーン・ロビンソン 作 松野正子 訳 岩波少年文庫

 原作が先か、映画が先か。
 どちらを先にしても、後にした方の印象は変わってしまうでしょう。
 なので迷ったのですが、原作を先に読みました。
 順序としてはこうなるはずだったし。
 というのも、私の好きな宮崎駿さんと河合隼雄さんが、この作品について書いた紹介文を、すでに読んでいたからです。
 いつか読もうとぐずぐずしてるうちに、スタジオジブリで映画化すると発表され、後悔しつつ、こうなったら映画の後に原作を…などと思ってました。
 でも大丈夫そうです。 原作が素晴らしく良かった。 これはお二人とも推すはずです。
 夏公開の映画も期待度倍増です!

 映画『思い出のマーニー』公式HPhttp://marnie.jp/index.html

 
【あらすじ】

 アンナは、転地療養のため、海辺の知り合いの家にやってきました。
 そこで彼女は、しめっ地屋敷に住む不思議な少女・マーニーと出会います。
 誰にも心を開かなかったアンナにとって、マーニーは初めての友達でした。
 ひと夏の、夢のような体験が、アンナと周りの人々に変化をもたらす物語。


【感想】

 “ふつう”に見える子が、いかに苦しみの暴風雨にさらされているかが、あまりにもリアルに描かれているので、びっくりしました。

 アンナと、育ての親(アンナは養子)の会話の場面が、特にそうです。
 なぜか不機嫌で、理不尽に当たり散らす、わがままっぷり。
 でも読み進めていくと、アンナがなんで“ふつう”の顔をして、無表情を装うのか、わかってきます。

 理不尽な怒りは、理不尽な運命から生まれたことでした。
 アンナは、母親や祖母が、自分をひとりぼっちにして他界したことが許せません。
 自分を受け入れてもらえなかったから、他人とも距離を置いています。

 それらを知ると、旅立ちの際の、アンナと育ての親との会話が、痛々しくて。
 お互い気を遣いすぎ。
 空気読みすぎですでにくたくたなんです。
 そこへ親切そうに助言をされたら、アンナでなくてもイラッとします。

 このへんが、絶えず気を遣わなければならない今時の若い人たちに似ています。
 仲間外れにされないよう、1日数百件ものラインの返信をするとか、沈黙を恐れるあまり、しゃべりまくりな会話とか。
 こんなに思いやりを強要されたら、疲れちゃうし、思いやりって、強要されるものじゃない。

 アンナは、マーニーには何でも話します。 大事な秘密も打ち明けます。
 裕福で両親もいるマーニーが、実は寂しい境遇にあることを知り、アンナはますます彼女を好きになります。
 ところがマーニーは、アンナを置いて、突然いなくなってしまいます。

 臨床心理学者の河合隼雄さんは、このお話について、こう書いています。

「アンナの経験した激しい怒り、うらみと、それに続く許しの感情は、彼女が癒されてゆくためにはどうしても必要なことであった。アンナはマーニーに対して怒り、「ゆるしてあげる!」と叫んだとき、彼女の周囲のすべての人、祖母を、母を、プレストン夫妻を、そして、彼女の運命を、すべて受け入れることができたのである」
(『子どもの本を読む』 河合隼雄 著 講談社+α文庫
  「第3章 幻想の世界、現実の世界」 より)


 自分の役目を終えたかのように、アンナの前から姿を消したマーニー。
 ここからお話は一転、マーニーは何者だったのかという、謎解きミステリーになります。
 古い屋敷に遺されたノートや、新しい出会いを経て、最後は大団円。 いやー感動しました。

 個人的に、アンナが、マーニーのことを、知りたいとは思うけど、知り合いにはなりたくない…と思い、ひとりで空想するところに共感。
 知り合いになったら、それっきり。 「今度遊びに行こう」なんて空約束だけして待ちぼうけ…よくあるからなぁ。
 それほどまでに、他人から無視されるのが嫌だったんですよね、アンナは。
 だから、アンナが周囲の人も孤独であることを知って、他人との付き合い方が変わっていくのが、とてもうれしかったです。

 もうひとつ、しめっ地屋敷を見つけたアンナが、家の裏側しか知らない前半と、表から家の中に入る後半の対比が面白かったです。
 マーニーのいる部屋の窓は、裏からしか見えないのです。
 なんだかあのお屋敷が、人の心の内面を表しているようでした。

 宮崎駿さんの紹介文もご紹介しておきます。

「この本を読んだ人は、心の中にひとつの風景がのこされます。入江の湿地のかたわらに立つ一軒の家と、こちらを向いている窓。
 何年もたってあなたが大人になって、この本のことをすっかり忘れてしまっても、その家はあなたのなかにずっとありつづけます。そして、いつかその窓に出会います。旅をしてはじめて見た家なのに、ずっと前に見たことがあるような気がして、なつかしいような、せつないような気持になって、とつぜんマーニーのことを思い出すのです。これはそういう本です」
(『本へのとびら ――岩波少年文庫を語る』 宮崎駿 著 岩波新書 より)



 本を読みふけって一日を終えるなんて久しぶり。 ここで一句。
   遠花火 あの子も見上げているやろか 夜道を照らす月とひまわり
 

テーマ:児童文学・童話・絵本 - ジャンル:小説・文学

  1. 2014/06/01(日) 23:23:01|
  2. 本&漫画
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